クロノグラムによる年号表記

17世紀から18世紀にかけて発行されたコインやメダルには” クロノグラム “という一風変わった年号表記が刻まれた物が数多くあります。私にはラテンによる銘文がどのような意味を持つかまでは分かりませんが、銘文の中に書かれている大文字のアルファベットだけを合算すると、そのコインが発行された年号が分かります。では、どのように算出すれば良いのでしょうか?それにはまずローマ数字を理解しなければなりません。この表記は意外にも20世紀に発行されたアメリカの金貨にも用いられています。

左側にあるのは1986年から発行が開始されたイーグル金貨です。右側は人気の高い”ウルトラハイレリーフ金貨”です。それぞれ、MCXLXXXVI ( 1986 ) とMMIX ( 2009 )がコインの右下に刻まれています。

さて、ローマ数字の基本ですが、
M = 1,000 D = 500 C =100 L =50 X =10 V =5 I =1 となります。

また大きい数字の後に小さい数字が来た場合は
CX =110 LX = 60 XI = 11 VI =6 のようになり、

小さい数字の後に大きい数字がきた場合は
XC = 90 XL = 40 IX =9 IV =4 になります。

では、ニュルンベルクの6Ducat金貨を見てみましょう。
女神が描かれている面に刻まれているラテンの銘文の中から、大文字表記のアルファベットを抽出してみます。

X D I V X C L I X M V V I

次にそれらの足し算を行います。

10+500+1+5+10+100+50+1+10+1000+5+5+1

合計は1698になりました。
実際に都市景観を描いた面を見てみると、1698年が刻まれています。

さて、ここで私もクロノグラムを用いたコインを考えついたのでご紹介しましょう。ラテン語はさっぱりわからないので英語による表記としました。そのコインはあまりにも有名なこの金貨です

英語表記では、” Lady in the cloud “と呼ばれている”雲上の女神”100 Corona金貨です。もし、この金貨に次の銘文を入れたら、

LaDy In the CLouD Very beautIfuL goLD CoIn

では、ここに書かれた大文字のアルファベットのみを抽出してみると

L D I C L D V I L L D C I

これを足し算すると

500+50+1+100+50+500+5+1+50+50+500+100+1

なんとこの金貨の発行年号の1908年と一致するではないですか!
皆さんもこのようなクロノグラムを考えてみてはいかがですか?

注)厳密に言いますと、当時のラテン語表記では” U “ の代わりに “ V “を用いていました。
今回の英語表記による銘文はこの慣例に当てはまっておりません。